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​FSHDとは

​〜顔面肩甲上腕型筋ジストロフィー(FSHD)を正しく知ろう〜

FSHDってどんな病気?

FSHD(顔面肩甲上腕型筋ジストロフィー)は筋ジストロフィーの病型のひとつです。

FSHDは、Facio(顔面)Scapulo(肩甲)Humeral(上腕) Muscular Dystrophy(筋ジストロフィー)の略で、この名前のとおり、顔や肩甲骨まわりの筋肉から弱くなります。 顔の筋肉が弱いことで、子供のころから口笛をふけなかったり、うまく笑うことができなかったり、瞼を閉じきれなかったりします。 また、肩甲骨の筋肉が弱いことで肩甲骨がとびでて、うでを高くあげることができません。 ほかにも、おなかの筋肉が弱くなっておなかが前に出たり、足の筋肉が弱くなってつまずいたりします。

病気が進むと、指や太ももなどほかの筋肉もおくれて弱くなり、 車いすが必要になる人もいます。また、筋肉の弱りかたが左右で大きくちがうことがよくあります。

 

FSHDの進行の度合いは人によってさまざまです。子供のころから車いすが必要になる人もいますし、中年になってから病気に気づく人もいます。 FSHDは、筋肉以外の所も悪くなることがあります。耳が聞こえにくかったり、目の奥の血管に異常が見られたりすることもあります。 

FSHDの原

⚫︎そもそも、DNAって何?

FSHDはDNA病気です。ではまずDNAとはいったい何でしょうか? 

人の体はたくさんの細胞からつくられています。そのひとつひとつの細胞は核をもっており、その中にDNAはしまわれています。 このDNAのなかにはタンパク質の設計図が書かれているところがあり、そういうところを遺伝子といいます。 この遺伝子からつくられるタンパク質が人のからだを形作っています。 だから、DNAは「からだの設計図」とよばれています。

⚫︎筋ジストロフィーのしくみはさまざま

筋ジストロフィーは、DNAの病気である「遺伝病」です。多くの遺伝病では、遺伝子が変化しています。そのため、普通のタンパク質をつくることができず病気になってしまいます。 筋ジストロフィーにはさまざまな型があり、その原因もさまざまです。

 

デュシエンヌ型筋ジストロフィーのしくみ

例えば、ジストロフィン遺伝子は、筋肉を頑丈にするジストロフィンタンパク質をつくっています。 もしジストロフィン遺伝子が変化すると、ジストロフィンタンパク質をつくることができず筋肉がもろくなってしまいます。 その結果、デュシェンヌ型筋ジストロフィーになります。

・FSHDのしくみ
では、FSHDはどうでしょうか? FSHDは全く逆で、DUX4(ダックス・フォー)という遺伝子が作るDUX4タンパク質が働きすぎることによっておこります。このDUX4タンパク質は、筋肉にとって毒となります。

DUX4タンパク質は本来、筋肉では作られていません。なぜなら、DUX4遺伝子のとなりのDNAであるD4Z4(ディー・フォー・ズィー・フォー)によって、DUX4タンパク質が作られるのをおさえているからです。
FSHDでは、このD4Z4の長さが普通と比べて短くなっています。そのため、DUX4遺伝子の働きをおさえることができず、DUX4タンパク質がつくられてしまいます。
このDUX4タンパク質によって筋肉がやられてしまい、FSHDになると考えられています。

じつは、DUX4遺伝子の働きをおさえているのは、D4Z4だけではありません。たとえばSMCHD1遺伝子やそのほか多くの遺伝子がタンパク質をつくり、それらのタンパク質がD4Z4にくっつくことで、協力してDUX4遺伝子をおさえています。 

そのため、これらのDUX4遺伝子をおさえるための遺伝子の一つが大きく欠ける、もしくはいくつかの遺伝子が少しずつ欠けるとDUX4遺伝子をおさえることができなくなり、FSHDになると考えられています。
 
たとえば、D4Z4がとても短くなっている人はそれだけでFSHDになってしまいます(FSHD1型)。また、D4Z4が少し短くなっている人がSMCHD1遺伝子の変化ももっていると、この場合もFSHDになることが知られています(FSHD2型)。さらに、これ以外のFSHDの原因もまだまだあると考えられています。

遺伝のパターン

FSHDは子供へと遺伝する可能性があります。FSHDの原因がひとつでないように、その遺伝のパターンもひとつではありません。

・FSHD1型

「とても短い」D4Z4をもっている人はそれだけでFSHDになります。これをFSHD1型と呼びます。この1型のとても短いD4Z4が子供に遺伝しない確率もする確率も同じくらいです。

※ハプロタイプ

DNA検査で調べるハプロタイプは、この短いD4Z4に連結しています。このハプロタイプもFSHDの遺伝に影響を及ぼします。ただし、遺伝学的に遺伝していても、発症するかどうかや、症状の程度は、親と子で同じとは限りません。

・FSHD2型

た、FSHD1型とは違って、「すこし短い」D4Z4をもっていてFSHDとなることがあります。これをFSHD2型と呼びます。 

すこし短いD4Z4は、それだけではFSHDにならないと考えられていました。
しかし最近の研究で、すこし短いD4Z4をもっている人は、別の遺伝子の変化の影響を受けてFSHD2型を発症することがわかっています。影響をあたえる遺伝子として、SMCHD1遺伝子、DNMT3B遺伝子、LRIF1遺伝子などがあります。
FSHD2型の場合、すこし短いD4Z4が子供に遺伝しても、その子供がFSHDになるとはかぎりません。すこし短いD4Z4と、SMCHD1遺伝子など別の遺伝子の変化の両方がそろってはじめてFSHD2型を発症し、その確率は、FSHD1型よりも低くなります。

・モザイク
お母さんのおなかの中で卵から赤ちゃんに成長していくときに、ある細胞でD4Z4が突然短くなってしまうことがあります。 その人は、D4Z4が長い細胞とD4Z4が短い細胞が混ざったからだになります。この現象をモザイクといいます。
モザイクの人は、子供にDNAを伝える精子や卵子もモザイクになっています。つまり、精子や卵子の中に、D4Z4が長いものや短いものがまざっています。このまざりかたは人によってさまざまなので、モザイクの人のこどもがいくらの確率でFSHDになるかはわかりません。

DNAの検査

FSHDはDNA検査で診断することができます。血液からとったDNAで検査をします。

DNA検査では、サザンブロット法でD4Z4の長さをはかったり、シーケンス法でSMCHD1の配列を読んだりします。

ただし、このDNAの検査は、FSHDの症状があるひとだけがうけられます。健康なひとやお母さんのお腹のなかにいる赤ちゃんがうけることはできません。

海外には、そういったひとが検査をうけることができる病院もあります。

FSHDについて、より詳しく知りたい方は、専門機関が解説しているこちらのウェブサイトも読んでみてください。

 

「顔面肩甲上腕型筋ジストロフィーの遺伝学的診断」

(国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター疾病研究第一部)

https://www.ncnp.go.jp/nin/guide/r1/FSHD.html

 

「顔面肩甲上腕型筋ジストロフィー診断手順」

(MD Clinical Station for Doctors 「筋ジストロフィーの標準的医療普及のための調査研究」班)
https://doctors.mdcst.jp/diagnosis/fshd/

 

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