第 12 回筋ジストロフィー医療研究会学術集会に参加しました
- FSHDJapan

- 9 時間前
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2025 年 10 月 24~25 日に長野県松本市で開催された、筋ジストロフィー医療研究会学術集会に参加しましたのでご報告です。
FSHD に関する発表の概要は、以下の通りです。
「FSHD(顔面肩甲上腕型筋ジストロフィー )患者会について」(日本筋ジストロフィー協会 FSHD 分科会・FSHD JAPAN 川合さん)
FSHD Japan は、患者や家族の孤立を防ぐための交流会や、セミナーの定期開催 、医療・健康・福祉に関する情報発信に取り組んできました。また、社会に対してFSHD の認知度を高めるための活動もしています。海外の患者会との交流も行ってい ま す 。そ う し た 一 方 で 、 病 気 の 研 究 や 治 験 に 必 要 な 患 者 登 録 リ ポ ジ ト リ「Remudy」(国立精神・神経医療研究センター)の患者登録数が伸び悩んでいるといった課題もあます。
FSHD Japan はこうした課題を解決し、一日も早い治療薬開発のために、患者と医療者を繋ぐ架け橋として研究への患者・市民参画(PPI)にも取り組んでいこうとしています。
「最近の顔面肩甲上腕型筋ジストロフィーの治療法開発研究の動向~疾患モデル動物や治験を中心として~」(信州大学 吉沢さん)
FSHD の治療薬開発の機運は高まっているものの、まだ治療薬は存在しないとのことです。治療薬開発のためには治療効果を研究するためのモデル動物が必要で、多くの種類の FSHD モデル動物が研究に用いられているようです。また、そうした研究から発展して、既に海外では治験が開始されているお薬があるとのことで、日本でも近い内に治験が開始されるのではないかということでした。
ただ、治験を呼び込むためには、Remudy の患者登録数を増やすことが望ましく、軽症の方でも「治療薬がないから病院に行かない」ではなく、「治療薬を創るために病院に行くんだ」という取り組みが大切になるとのことでした。また、患者・医療従事者・研究者の連携も大切とのことでした。
「顔面肩甲上腕型筋ジストロフィーにおける自然歴研究と患者市民参画の重要性」(大阪刀根山医療センター 松村先生)
FSHD 患者の臨床データは、より重傷な他の筋ジストロフィーの病型に比べて少ないとのことです。これは、FSHD には軽症例が多く、専門機関への患者の集約が進んでいないことが原因の一つと考えられるとのことです。また、患者によっては医療機関から遠ざかってしまう(治療薬がないから受診しない)人もいるそうです。
そうしたことから、日本に治験を呼び込むための自然歴研究が進みにくいという、難しい課題に直面しています。専門機関による FSHD のデータ収集には限界があるとのことで、患者グループとの連携(PPI)が重要になってきているとのことです。
「顔面肩甲上腕型筋ジストロフィー 1 型における D4Z4 リピート回数と初発症部位の関係」(大牟田病院 荒畑先生)
時間の関係で、直接ご講演をお聞きすることはできませんでしたが、抄録には以下の情報がありました。過去 10 年間の FSHD1 患者 22 名を調べたところ、上肢と下肢の発症では、D4Z4 リピート回数に変わりはなかったとのことです。上肢から発症と診断された患者と、下肢から発症と診断された患者の平均リピート回数は、それぞれ 4.9 と 4.1 で有意な違いはなかったとのことです。一方で、発症年齢は下肢から発症と診断された患者の方が約 10 年早かったとのことでした。
その他にも、患者レジストリ Remudy に関する発表や、FSHD 以外の病型の筋ジストロフィーに関する発表もありました。研究会に参加して、患者当事者を含む様々な立場の人が協力してこの病気と向き合おうとしているという印象を受けました。
普段、医療関係者の前で患者会の取り組みについてお話しする機会は多くありません。私たちの話に、先生方も熱心に耳を傾けてくださり、なかには FSHD 患者会への協力の意思を示してくださる方もおられました。
医師からのコメントの中で印象的だったのは、「医師を育てるのは患者だ」ということです。いくら本を読んで、先輩医師からの指導があっても、患者さんを診るという経験がないと医師は育たないそうです。
FSHD はゆっくりと進行し、深刻な合併症もく少ない上に、現在有効な治療法が確立されていません。そのため、症状が軽いうちは、つい病院に行くことを避けがちです。しかし本当は、筋ジストロフィーを専門とする医師にとって、軽度の患者さんのデータこそ重要なのだそうです。なぜなら、患者さんのさまざまな状態を知ることで、医師の病気への理解が深まるからです。
FSHD を研究できる医師を育てるためにも、患者さんはなるべく筋ジストロフィーの専門医のいる、神経筋疾患先端医療推進協議会(CCNMD)加盟病院医療機関を受診するのが大切なのだと痛感しました。





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